組手について

Kumite
組手を楽しむ

組手を楽しむ

自由組手は武道・格闘技の最大の楽しみのひとつです。

子供は仮面ライダーごっこをします。
ライオンの子はじゃれあって狩りの練習をします。
格闘は本能に根ざすものであり、本能を解放する行為には喜びが伴うのです。

しかし現実には「組手があまり好きではない。」という声を聞きます。

組手は痛い、苦しい、怖い。
稽古の結果を出すんだ、という気負い。
流派の名前を背負うプレッシャー。
「楽しい」と言うより「苦しい」と言う方がカッコいい。

このような思いが本来の楽しさを覆い隠しています。

太気拳武禅会では組手の

「楽しさ」と「遊び」

を重視します。

不謹慎に聞こえるかもしれません。
しかし遊びはその瞬間への集中を求め、天人合一への扉を開きます。
夢中になって遊ぶうちに自然と高みへ登るのです。

「怪我をしない」「痛くない」「苦しくない」「怖くない」

真剣に遊ぶことで武を追求しています。

武禅会の組手

太気拳は激しい組手稽古を通して他流派と技量を競い、高め合ってきました。
防具をつけず素手で思い切り顔面を打撃することを許された組手稽古を通じ実戦拳法といわれてきましたが、怪我が多かったのも事実です。
多くの挫折者と、ごく一部の強い人間が育つ、そんなシステムだったような気がします。
私自身も多くの人を傷つけ、自分もまた怪我に悩まされてきました。

年齢を重ねるにつれ、怪我がいかに身体に負担をかけるものか分かるようになります。
武術は養生を兼ね備えねばなりません。
怪我をすることは絶対によくありません。
明日の勝利のために今後数十年の身体の不調を招いては養生と護身の両立とは言えません。

現在、太気拳武禅会では上級者同士では昔ながらの激しい組手をすることを禁止してはいませんが、普段の稽古では従来の激しいやり方とは二つの点で異なる組手をしています。

ひとつには、自由に打撃・組技などを行いますが、全て寸止めまたはライトコンタクトを原則とします。
技が決まるかどうかは思い切り当てずとも分かります。
技へ入るタイミング、角度、スピードなどはライトコンタクトで十分に研究することが可能です。
これにより怪我と恐怖心を最小限に抑えます。
恐怖心を克服した到達点と、楽しくて夢中で歩んだ到達点、道は違えど同じ場所です。

ふたつめとして、勝敗を一切求めません。
そもそも武術は勝敗を競うものではありません。
「勝ち負け」という構造の中に自分を置いたとき、たとえその相手には勝ったとしても必ず誰かには負けます。
勝ちか負けか、相手か自分か、という相対的な構造ではなく、お互いの関係性そのものを高めてゆくのです。
お互いを認め合い、楽しむのです。
組手・格闘の目的が勝敗ではなく「相互理解」としたとき、真の護身、無敵の境地がみえてきます。

ライトコンタクトで組手を行う団体は珍しくありませんが、組手の目的を勝敗ではなく「相互理解」とすることによって、「相手を怖がらせない」「相手に楽しんでもらう」「お互いの技量を磨く」といった優しい感情で組手に臨むようになります。

組手は肉体を使ったコミュニケーションです。
太気拳はもともと、激しい組手稽古を通して他流派と技量を競い、高め合ってきました。

組手はコミュニケーション

実社会で経験を積まれた方であれば感じておられるのではないでしょうか。
社会での成功は勝ち負けではなく、いかに相手と認め合う関係になり、高め合うかによってである、ということを。
私自身サラリーマンをしていましたし、自分で商売もしました。
そのときに感じたのは商売は競争ではなく、利益の与え合いであるということです。
少なくともそのような時期のほうが楽をして利益を上げることができました。

武術は人と人のやりとり。
つまりコミュニケーションの一形態です。
組手を勝敗の構造として捉えるということは、会話であれば相手を言い負かして自分の主張だけを押し通してやろう、という態度に似たものです。

最上のコミュニケーションとは相手を屈服させることではなく、お互いを理解しあい認めあうことではないでしょうか。
そんな人であれば誰でもまた会いたくなり、そこから様々な展開が生まれます。

護身とは身を守ることであって相手に勝つことではありません。
相手が勝つことは自分が負けることではありません。
その場を戦いの場にしない、ということが最高の護身であることは疑いがありません。

名人と言われる人はその場を戦いの場とするのか、表現の場とするのか、理解する場とするのか、その選択権を得ることに長けているのではないでしょうか。
戦いを制するのではなく場を制するのです。
勝負するのが悪いということではありません。
勝敗をつけるのであれば必ず勝つ場を設定するのです。

「打って勝つのではなく、勝って打つ」
そこまでを含めての「武」でなくては死ぬまで強くなる、ということはありえません。

太気拳武禅会の組手では、お互いに心を通じ合わせ気を配りながら無言のコミュニケーションを繰り広げます。
上級者同士であれば速く強く打つこともありますし、初心者を楽しませてあげるのもまたよい稽古です。

自由な組手を通じて遊び、楽しみ、対話することを学びます。
無言の対話を通じ、相手が攻撃したいのか、守りたいのか、前に行きたいのか退きたいのかを肌で感じとるのです。

「勝敗」から「認め合う・理解し合う」とすることで武術に対する認識が180度転換するかもしれません。

これらのコンセプトが太気拳武禅会の組手稽古の根底にはあります。

しかし、結局のところそんなことは後付けであって、

組手って楽しいよね!

ということが初心者から上級者まで、すべての方とシェアしたい、心踊るような感覚です。

多くの方々と組手を通じて、楽しく交流したいと思います。

武術は人と人とのやりとり、すなわちコミュニケーションです。

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