「中国雑話 中国的思想」ブックレビュー

June 5th, 2012

「中国雑話 中国的思想」著者 酒見賢一氏
NHKラジオ中国語講座テキストに連載された文章をまとめた本。
 
武術を修行していない人にとって、太気拳や意拳という名前は馴染みが薄いと思います。
中国武術といえば太極拳が有名ですが、意拳、そして意拳から生まれた太気拳は太極拳と同じく気を力の根元とする内家拳の流れを汲みながらも、型を廃し実戦を重んじる点に特色があります。
 
太気拳の源流である王向斎について書かれた本は日本では珍しく、また読みやすいのでオススメです。
 
気功や王向斎の創始した意拳について、端的にまとめられた文章を引用し紹介します。
(「」内が原文ママ引用)
 
 

気功と武術

中国思想と文化の一部をなす気。
気功とは
「自ら訓練して心身に気を充満させ、コントロールする行法である」。
 
そして
「武術家たちも気功の極めて有力な伝承者であった。しかも現実に生き死にに直面するのが当然であった武術家であるから、無効なもの曖昧なもの無駄なものは徹底的に削ぎ落としていった。今はそれを硬気功、武術気功と呼んでおり、汎く太極拳も含まれ、もちろん医療気功と対立するものではない。」
 
 

王向斎と意拳

ただ手を上げて立つだけのシンプルな気功法である站椿功。
「站椿功の修練がアルファでありオメガであるという異色の拳法」
 
「站椿功を行うことが拳法の神髄に至る最短の道である」
 
 

武術に求めたもの

「拳法は魔法でもなんでもなく、すべて心身の潜在的顕在的本能的自然的な合理的道理を持っており、至誠をもって求め続けるなら誰にでも習得できる、とする。拳法は「拳学」であった。」
 
「王向斎は拳法の本質だけを捕まえて、それを直接ただちに伝授しようとするわけで、入門者たちを拳法というものの根源に最短距離で近付けさせようと試みたのである。」
 
「養生と拳術は一つのものである。自分の平衡を保つ力さえ養われれば、あとは実際の状況に応じて本能的に技を発すればよい」
 
 

武術から養生へ

壮年から晩年の王向斎は保険治病目的の為に站椿功を多くの人に指導した。
 
「気功は何ら神秘的なものではない。人が病むのはつまるところ臓腑の機能が平衡を失うからである。站椿功の原理は人体のあらゆるバランスを調整するとともに、平衡機能を増強させることによって治病健身に導くことにある」
 
 
王向斎~澤井健一~そして我が師、島田道男と継がれたこの武術は文化でもあり、それを大切に育んでゆかねばならない、との思いを新たにしました。