譲るつよさ

April 25th, 2025

推手という中国武術ではポピュラーな稽古がある。
向かい合ってお互いの腕を合わせ円を描き押し合う稽古だ。
自身の中心を守り相手の中心を奪う感覚を育むことができる。

この推手のとき、力をいれて自分の決めた動きと中心を守るようなやり方がある。
相手にどう押されても関係なく自分の有利な体勢を力で維持し、現状を崩さないやり方だ。
反対に、力をいれず相手の動きに合わせながらも中心を維持し続けるようなやり方もある。
剛と柔だ。
前者のようなやり方で自分の決めた形を貫ければそれはそれでいい。
技術なんて圧倒的な力の前では無意味とさえいえる。
ほとんどの格闘技で体重制が採用されている現実をみればそれがわかる。
だが、自分より力の強い人は大勢いる。
体重制のない武術においては自分より強い相手と対峙することを想定して技術体系は構成されるべきだ。
相手よりも力が弱いことを前提とすれば、相手に動きを合わせるしかない。
ただし、中心は譲らない。安定は維持し続ける。
自分の体勢は相手に合わせて変化し続けるが崩れない、ということは可能だ。

安定する場所から動かないという強さではなく、安定する場所が広いという強さ。
また安定した場所から外れた時にすみやかに復帰できる強さ。
相手や変化に合わせつつ自分を保つ、というありかただ。

かたくなにならず器を広くしていこう。
太気拳は、日常の在り方も教えてくれる。

とはいえ剛と柔は表裏一体、グラデーションであり分かつことはできない。
「強くなければ生きてはいけない、優しくなければ生きていく資格がない」
byフィリップ・マーロウ
って誰やねん。

雨のあとってなんか好き