前後への力は上下への力
March 1st, 2015
武術においては前後左右の敵に対して、押す、引く、打つなどの力が求められます。
しかし、我々はこの「前後左右への力」ではなく「上下への力」こそが武術の基本だと考えています。
人間は二本の足で、地面を踏みしめて立っています。
前からの力に対抗するのは、足裏と地面との摩擦力。
ツルツルの氷の上では簡単に押されてしまうし、足が地面に固定されていれば押されても耐えることができます。
そしてこの摩擦力は上から地面を押さえつけることによって生じるものです。
車が走ることができるのも、タイヤと地面の間に摩擦力があるから。
その摩擦力やトラクションを最適に調節しているのが、車でいえばサスペンション。
我々は立禅などの稽古を通して、頭頂から足先までがサスペンションのようにフレキシブルに圧力の変化に対応できる身体を求めています。
頭は天から吊るされているようであり、天井に押し付けているようであり。
そんな感覚が立禅を通して養われてゆきます。
それは上がる力と下がる力の調和。
そこから前後左右への力も発見されます。
いかに殴るか、蹴るか、ではなく、いかに立つか。
やり方ではなく、在り方を重視した稽古です。